イトモロコ
Squalidus gracilis gracilis
  コイ科カマツカ亜科スゴモロコ属
地方名 不明
     


         
  体長 最大8cm(よく捕れるのは3〜5cm)  
  分布 濃尾平野以西の本州。四国北東部、九州北部。  
  矢作川での生息域 上〜下流域。極まれに捕れる程度。  
         
  体形は太短く、目が大きい。口はとがりひげは長い。体側の側線鱗が大きく上下に目立つのが特徴。流れのゆるやかな砂底を好み、川底を群れになって泳いでいることが多い。雑食性で水生昆虫、付着藻類など何でも食べる。地味で、存在すら知られていない魚だが、よく見れば実に愛らしい。  
     

     
   ナマズ館長が、初めてイトモロコに出会ったのは、3年前。日本にいる8種類のモロコと名のつく魚を全部見たくて旅をしたんだ。タモロコ、ホンモロコ、カワバタモロコ、ヒナモロコ、コウライモロコ、スゴモロコ、デメモロコ、そして、イトモロコ。
館長はイトモロコに会うために、わざわざ、滋賀県まで出かけたんだ。でも、翌年、偶然、矢作川で見つけちゃった。いたんだね、矢作川にも。矢作川の懐の深さには、つくづく感動したよ。
知ってるようで知らないのが川の中。まだまだ身近な矢作川にも、みんなの知らないことが、たくさんあるはずだよ。
 
     


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  コウライモロコ
Squalidus chankaensis tsuchigae
  コイ科カマツカ亜科スゴモロコ属
地方名 ムギ、ムギバエ、ムギツク
     


         
  体長 最大15cm(よく捕れるのは7〜9cm)  
  分布 濃尾平野。和歌山県から広島県までの本州瀬戸内側。四国の吉野川。  
  矢作川での生息域 ほぼ全域。本来、イトモロコなどより下流を好むのだが、矢作川にはダムが多いため上流域にまで多く生息する。  
         
  体はずんぐりと太短く、鼻先は丸く見える。雑食性で水生昆虫、付着藻類など何でも食べる。産卵期は5〜7月で、粘性の弱い卵を砂泥の水底にばらまく。1年で5〜7cm、2年で8〜10pに成長する。シラハエ(オイカワ)釣りではムギ、ムギバエと呼ばれて外道扱いすることが多い。しかし、甘露煮にするとオイカワよりも骨が柔らかく美味しいので専門にねらって釣る人も。この場合、オイカワよりもゆるい流れの岸際をねらい、エサを底に這わせて釣る。  
     


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  スゴモロコ
Squalidus chankaensis biwae
  コイ科カマツカ亜科スゴモロコ属
地方名 不明
     


         
  体長 最大12cm(よく捕れるのは6〜8cm)  
  分布 琵琶湖の固有亜種だが、移動により各地に生息。  
  矢作川での生息域 全域で見かけるが、コウライモロコに比べると、生息数はうんと少ない。  
         
  体形は細くスマートな印象。そのせいか目が大きく見える。口はとがり、ひげは長い。
琵琶湖では水深10m前後の砂底を好んで群泳する。矢作川ではダム湖や流れのゆるい深場で群れを見ることが多い。
産卵はコウライモロコとほぼ同じ。コウライモロコの祖先が、琵琶湖に閉じ込められて進化したものがスゴモロコだとかんがえられている。
 
     

     
  モロコを見分ける  
     

       
  魚の中で見分けにくいのがモロコの仲間。中でもコウライモロコ、スゴモロコ、デメモロコ、イトモロコの4種類は、魚に詳しい人でも見分けるのが困難だ。
ぽんつくを楽しむだけなら「ぜ〜んぶモロコ」でOK。でも、川の秘密をもっと知りたいなら、正しく見分ける努力をしてみよう。
 
  大切なのは、見分けられるようになることよりも、1匹1匹の魚をよく見ることだね。「ヒレは? ヒゲは? ウロコは?」と、意識して見ることが観察する目を育てることになるんだよ。  
       

     
  水槽や手のひらで見比べる  
     
  体の形 吻(鼻先)の形 ヒゲの長さ その他
コウライモロコ ずんぐりとして
太短い
鼻先が丸みを
帯びている
長い
瞳の径をこえる
成魚は
12〜13cm
にもなる。
スゴモロコ 体高、尾ひれの
付け根が小さく
スマート
口は低い位置
にあり、
口裂が大きい
瞳の長さに等しい
また、それ以上
 
デメモロコ 頭から背ビレ
にかけて
盛り上がる
  短い
瞳の3分の2以下
体側は白銀色が
目立つ
イトモロコ 頭から背ビレ
にかけて
盛り上がる
鼻先が長く
尖っている
長い
瞳の径をこえる
背部に小さな
黒い斑紋が
目立つ

     
  虫メガネや顕微鏡で見比べる  
     
  縦列鱗数
(うろこの数)
脊椎骨数
(背骨の数)
鰓耙数
(エラのひだ数)
肛門〜尻びれ
の鱗数
コウライモロコ 37〜40 37(36〜38) 6〜11  
スゴモロコ 39〜41 38(37〜39) 5〜8  
デメモロコ 37〜41 36(35〜38) 6〜8 3〜5
イトモロコ 33〜36 33〜34 4〜7 2〜4

       
  研究者は正しく魚を判別するために、ウロコの数、背骨の数、エラのひだの数をていねいに調べるんじゃ。つまり、そこに魚の種類による違いがあるというわけじゃな。とはいえ、その数はアバウト。縦列燐数40、脊椎骨数38、鰓耙数8の魚ではいくつもの魚があてはまって困ってしまうのぉ。
現在では、DNAで判別する方法が一番確実とされておるんじゃよ。
 
       
     

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  ゼゼラ
Biwia zezera
  コイ科カマツカ亜科ゼゼラ属
地方名 不明
     


         
  体長 最大7cm(よく捕れるのは4〜5cm)  
  分布 濃尾平野以西の本州。九州北西部。  
  矢作川での生息域 下流域。よどみ、ワンドに多い。  
         
  流れのほとんどない砂底を好み、川底に静止していることが多い。見た目は小さなカマツカのようだが、鼻先がずんぐりと丸いことから容易に区別できる。主に泥の表面にある藻類などを食べるので、釣りの対象にはならない。よって、釣り人も知らない雑魚がこのゼゼラなのである。  
     


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  カマツカ
Pseudogobio esocinus esocinus
  コイ科カマツカ亜科カマツカ属
地方名 スナモグリ、カワギスなど
     


         
  体長 最大30cm(よく捕れるのは10〜15cm)  
  分布 秋田、岩手を除く本州。四国の一部、九州。  
  矢作川での生息域 ほぼ全流域。砂地に多い。  
         
  スナモグリと呼ばれるように、日中は砂の中に潜っているが、夜間はボーっと砂の上に横たわっていることが多い。ぬっと伸びる口で砂ごとエサを吸い込み、エラから砂だけをはき出す。柔らかくふかふかした砂底を好むので、砂の多い矢作川が大好きな魚なのかもしれない。  
     

     
  見た目のイメージと異なり、意外に水質悪化に強い魚のようだ。矢作川はもちろん、逢妻女川、逢妻男川、家下川などにも、たくさんいるよ。
冬、ふかふかの砂底をつつくと、4cmくらいの稚魚が、何十匹も飛び出してくることがある。冬は砂の中ですごすんだね。
アミでも採れるけど、ミミズのえさで釣るのも面白いよ。
 
     


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